「マネーボール」は、弱小球団アスレチックスのGM(ゼネラルマネージャー)であるビリー・ビーン(演ブラッド・ピット)がワールドシリーズ優勝を目指す物語です。
資金難のなか、「セイバーメトリクス」という統計的手法を用いて、勝利を重ねていきます。
アメリカでベストセラーとなったノンフィクション「マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男」をもとにしています。
アカデミー賞では、ビリー役のブラッド・ピット、ピーター役のジョナ・ヒルなどがノミネートされました。
一瞬だけですが、イチローもモニター画面のなかに映っていますよ。
監督はベネット・ミラー。2011年公開。
「マネーボール」のキャスト紹介
ビリー・ビーン(演:ブラッド・ピット)
弱小球団アスレチックスのGM(ゼネラルマネージャー)
演:ブラッド・ピット
アメリカの俳優、プロデューサー。
「オーシャンズ」シリーズ、「セブン」、「ファイトクラブ」、「Mr.&Mrs.スミス」など、出演作多数。
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」ではアカデミー賞助演男優賞を受賞。
ピーター・ブランド(演:ジョナ・ヒル)
アスレチックスのスタッフ。
データを扱うのが得意。
ビリーの手伝いをする。
演:ジョナ・ヒル
アメリカの俳優、コメディアン。
「マネー・ボール」、「ウルフ・オブ・ウォールストリート」にてアカデミー賞助演男優賞にノミネートされた。
「マネーボール」のあらすじ
主人公のビリー・ビーンは、元野球選手。
かつてメッツからドラフト1位指名を受けるなど将来を嘱望されていたが、活躍することかなわず引退。スカウトに転職し、現在は弱小貧乏球団アスレチックスのGM(ゼネラルマネージャー)をしている。
資金に困っていたビリーは、ある日、「サイバーメトリクス」という統計的手法が得意なピーターという青年に出会う。
ビリーは、「サイバーメトリクス」が多額の資金を要せず、そして容姿や年齢、素行などではなく純粋にデータのみで選手を見ることに心を動かされ、その手法を採用することに決める。
彼は、ピーターとともに、球団の改革に乗り出し、ワールドシリーズ優勝を目指すが…?
「マネーボール」の感想
「マネー・ボール」は、球団のGM(ゼネラルマネージャー)であるビリーがデータを駆使して優勝を目指す物語である。ビリーは、優勝することによって、球界がデータを大切にするようになることを目指している。
よく、選手と監督が一緒になって優勝を目指す物語というのがあるが、そういった物語とは少しばかり毛色が違っている。
そういったタイプの美しい感動物語をイメージしていると、肩透かしを食らってしまうかもしれない。
主役はあくまでもGMであるビリーであって、監督や選手は脇役である。
また、この映画において勝利のために重要視されるのはデータであって、人柄や努力、絆などでは全くない。
球界の人々はふつう、選手の外見や素行、年齢なども考慮して採用活動を行っているそうである。
しかし、ビリーは、そういったものをはっきりと排除する。彼は、出塁率などのデータのみを見て選手を採用することに決める。
ビリーは、高校生の時に(実力を見誤られ)過大に期待されて野球選手となり、大学へ進学しなかったことを後悔している。そのことが、彼のこの決定に影響を及ぼしている。
この彼の決定は、やがて弱小球団のアスレチックスを驚異の20連勝へと導く。
そして、それをきっかけにして、アメリカの球界はデータを重視する方向へと変わっていくのである。
なお、当然のことともいえるが、このデータ重視の姿勢には反発や異論もあることを付け加えておく。
ところで、私は野球のことはサッパリなのであるが、野球でデータというと、「野村ID野球」という言葉が浮かんでくるのである。
日本の故野村克也監督も、比較的弱い球団を率いてデータを利用した頭脳的な野球をしていたように思う。資金力がなく弱いチームというものは、頭脳を使うようになる傾向があるのかな、なんてちょっと思った。
総じて、合理的な考え方をするアメリカらしい映画であった。
日本では、こういう映画はあまり作られないし、ウケないのではなかろうか。日本では、データよりも人間性や努力や絆などが大切だと訴えかける作品が多いのではないかと思う。
とはいえ、見た目や知名度、年齢などに惑わされず、その人の実力を見ることが大切というのはその通りだと感じることであった。
余談だが、この映画で主演したブラッド・ピットは、特に若年期においてはその容姿の美しさをたたえられて名を上げた人物のように思う。
彼の中には、容姿ではなく実力(演技)を見てほしいという想いがあるかもしれない。
その想いが、多少なりともビリーの演技のなかに生かされたのではないかと想像してしまうのだが、それは考えすぎだろうか。