イギリスの田舎町ブライの古いお屋敷にまつわるアメリカ人の世話係と両親を亡くした子供たちを中心とした物語。超自然的ホラーにラブロマンスを組み合わせた「ゴシック・ロマンス」な作品となっています。
失意のなか単身イギリスへ渡り、古いお屋敷での新しい生活を始めた世話係のダニが次第に戦慄の恐怖へと巻き込まれていきます。
【第9話】あらすじ・キャスト・感想を紹介します。
目次
「ザ・ホーンティング・オブ・ブライマナー」前回までは…
Netflix全9話
放送期間:2020.10.09 Netflixにて配信スタート
原案・制作:マイク・フラナガン
ホラー映画「ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス」(前作)
「オキャラス/怨霊鏡」「ドクター・スリープ」
原作:ヘンリー・ジェイムズ「ねじの回転」
【第9話】「ジャングルのけもの」
↓↓海外ドラマ『ザ・ホーンティング・オブ・ブライマナー 第8話』あらすじ・キャスト紹介・感想はコチラ↓↓
ザ・ホーンティング・オブ・ブライマナー【第9話】キャスト紹介
【ヴァイオラ・ウィロビー役/「ブライのお屋敷」の女主人。湖の貴婦人=顔のない幽霊】ケイト・シーゲル
【世話係:ダニ・クレイトン役】ヴィクトリア・ぺドレッティ
【兄マイルズ・ウィングレイブ役】ベンジャミン・エヴァン・エインズワース
【妹フローラ・ウィングレイブ役】アメリエ・ビー・スミス
【叔父ヘンリー・ウィングレイブ卿役】ヘンリー・トーマス
【庭師:ジェイミー役】アメリア・イブ
【ストーリーテラー/現在のジェイミー役】カーラ・グギノ
【料理人:オーウェン・シャルマ役】ラウール・コーリ
【家政婦:ハナ・グロース(故人)役】タニア・ミラー
【前任の世話係:レベッカ・ジェセル(故人)役】タヒラ・シャリフ
【ヘンリーの執事:ピーター・クイント(故人)役】オリヴァー・ジャクソン・コーエン
【パーディタ・ウィロビー役ヴァイオラの妹(故人)】キャサリン・パーカー
ザ・ホーンティング・オブ・ブライマナー【第9話】あらすじ(ネタバレ)
ブライの物語は「アナタでワタシ、一つ」という言葉で脈々とつながっている。
最終回はハナがオーウェンと面談している場面から始まる。初対面の時からハナは「なんて魅力的な人」と好印象でオーウェンを愛していた。自らの死を受け入れて、ハナは気持ちを告げずにいたことを悔やんだ。オーウェンも同じ気持ちだったが、だからこそ「僕やみんなを助けるんだ、屋敷の外で。記憶に隠れたままでいるような自分勝手な人じゃないよね」とハナに勇気を与えた。
ハナはダニを引きずりながらお屋敷内へ入ろうとする「湖の顔なし幽霊=女主人ヴァイオラ」の前に立ちはだかるが、一瞬重なってすり抜けられただけだった。女主人ヴァイオラはいつものように寝室へ向かう。
今度はフローラがベッドで待ち構える。女主人ヴァイオラには最愛の娘イザベルの記憶がよぎり、ダニから手を離してフローラを抱きかかえ連れ出す。向かう先は湖の底。途中にピーターに入れ替わったマイルズとレベッカが潜んでいた。助けを求めるフローラになす術なく目で追うレベッカだった。ダニはヨロヨロとなんとか立ち上がった。
ふいにヘンリー卿が車でブライへ駆けつけた。フローラの姿を見つけ一目散に駆け寄る。そして女主人ヴァイオラの目前に身を呈して立ちはだかる。すぐさま女主人ヴァイオラに首を締め上げられ投げ捨てられた。ヘンリーは幽体離脱してフローラを見つめる。
偶然にも悪夢で胸騒ぎを覚えたオーウェンとジェイミーもお屋敷に戻って来た。ハナが一大事だから湖へ急げと告げる。もはやハナにはどうすることも出来ない。
レベッカが覚悟を決め「ここは私に任せて、先へ進むの」そしてフローラは泣きながら「アナタでワタシ、一つ」と。フローラは幸せな「母親と一緒」の記憶に閉じ込められた。
ヘンリーもフローラも絶体絶命だった。次の瞬間、ダニが女主人ヴァイオラに向けて泣き叫ぶ「アナタでワタシ、一つよ…」
ダニが自ら女主人ヴァイオラを招き入れた時、まさにブライの呪いが解けた瞬間だった。ブライの霊すべてが解放されたのだ。
ヘンリーは生死の間でハナから言付けを得て息を吹き返す。思わずフローラとマイルズを思い切り抱きしめるのだった。ハナの行方を気にしたオーウェンは、翌朝古井戸にハナの遺体を見つけ悲嘆にくれた。
ブライのお屋敷に漂う空気はガラリと軽くなった。敷地の中に囚われていたすべてが他所へと去って行った。
ヘンリー叔父さんは長年の呪縛から解放され、マイルズ・フローラの両親ドミニク・シャーロットとの思い出話を余すところなく語ろうと2人に約束する。
一方オーウェンは自ら手厚くハナを弔い、その深い愛を貫くのだった。
ダニは「すごく静かだけど気配を感じる。彼女の心は平和じゃない」とジェイミーに打ち明ける。「ジャングルに潜むケダモノ。いつか私を乗っ取ろうとしているのだ」と…。
そして、皆それぞれの新しい場所を求めて旅立つのだった。
「ゆっくりでいいんだ。ポピンズ、あんたと楽しみたいんだ」ジェイミーはダニを思いやり、やがて2人の花に囲まれた生活も5年の歳月が流れた。心の平和を取り戻したダニだが、ある日ガラスに映る「女主人ヴァイオラの姿」を目にする。
「残された時間は分からないけど、最期まであなたと一緒にいたいの」ダニは鉢植えに指輪を忍ばせジェイミーへプロポーズする。
ダニとジェイミーはお祝いも兼ねてオーウェンの経営するレストランで食事をする。愛するハナの写真を飾り経営も順調そうなオーウェンとの再会を楽しみながら、ブライの皆の近況を聞く。フローラに彼氏が出来たと聞かされ驚くジェイミーの横で、ダニは水差しに映る「女主人ヴァイオラの顔」を見るのだった。
オーウェンは最近ヘンリー、マイルズ・フローラとした会話を伝える「不思議なことにマイルズとフローラだけはブライで起きた出来事の記憶が消え失せている。愉しそうに暮しているし、このままそっとしておきたい。暗い影などいらない、彼らも僕たちにも」と様子を聞き、ダニは複雑な表情を見せるのだった。
ダニが自宅キッチンで皿洗いをしていると水面にまた「女主人ヴァイオラの顔」が浮かぶ。手から皿が滑り落ち怯えるダニをジェイミーがそっと抱きしめる。
2人の婚約証明片手に帰宅するジェイミーだが、風呂場で溢れる水面にまたも「女主人ヴァイオラの顔」が浮かび見入っているダニがいた。やがてある晩悪夢から目覚めたダニは、気づくとジェイミーの首に手をかけていた…。
ジェイミーは消えたダニを追ってブライのお屋敷に戻っていた。湖の底には「女主人ヴァイオラ=ダニ」が眠っていた。ジェイミーはかつてダニが叫んだ言葉をそのまま発してみるものの、もはや何の変化も起こらなかった。
やがてダニの記憶も顔も消え失せ、ダニに恋した女性の思い出だけが残るのだ…と語り手の女性が長い長い怪談話を締めくくった。
明日結婚式を迎える新婦が「これは怪談話じゃない、ラブストーリーよ」と言い、語り手の女性と2人きりで今の自分の思いを語り始める。新婦は2人ハグして別れる際「偶然かしら、私のミドルネームはフローラよ」と言い残した。
幸せに包まれた結婚式会場。かつてブライにいた頃の面影が集うのだった。語り手の女性はあの庭師ジェイミーであった…。
今宵もまた愛するダニが戻ることを祈って眠りにつくジェイミーがいた…。(第9話完)
ザ・ホーンティング・オブ・ブライマナー【第9話】感想
ブライの敷地内での共通語「アナタでワタシ、一つ」この切り札さえ持っていれば、敷地内に永遠といられるのだ。望むと望まないと関わらず…。
切り札は「禁断の果実」でもある。口にしたら最後。ブライの敷地に縛られて永遠に彷徨い、記憶も顔さえも消え失せて忘れ去られていくのだから。
湖に溢れる水は、亡き女主人にして顔なし幽霊となったヴァイオラの流す「涙」なのか。水の流れが長い歳月の間に記憶も顔もそぎ落とし消え失せさせてしまうという象徴なのか。最後まで観終えると、湖の舞台設定に感動すらおぼえます。
ダニエル・クレイトン先生。あなたはブライのお屋敷における最高の救世主にして、最大の功労者でしたね。皆が絶体絶命の危機にある時、命からがらの我が身をなげうって放った切り札「アナタでワタシ、一つよ」には心を撃ち抜かれてしまった。あなたは最後の最後まで「誇り高き教師」だったように思えます。あなたはやはり芯の強い人、そして誰からも愛され尊敬されるべき人間なのです。ブライを離れアメリカへと旅立つ際、ヘンリー卿があなたをハグしながら「君になんと礼を言ったらいいか分からない。私は幸運な人間だ。我々は先人の情けに救われたんだ。もし無ければお互いどんなに惨めだったか…」と言った場面。言葉は交わしてなくても、やはりお互いの心は通じていたのでしょう。「君にマイルズ・フローラを託して本当に良かった、君のことは決して忘れない」とヘンリーの顔に書いてありましたから。
怪談話の語り手は現在のジェイミー本人でした。あなたのダニへの愛情は湖よりも大きくて深く清らかでした。ここ一番で説くあなたの名言は心に響くものばかりでした。「夜顔の花園」でダニへ語りかけた場面は、今でもイチオシの名シーンです。ブライの全てを背負ってしまった最愛のダニを独り待ち続ける姿にも心打たれます。苦悩を乗り越え人の痛みを知るあなたにはきっとまた幸せの瞬間が訪れると信じます。
料理人オーウェン。最初から最後まで変わらぬ最高にいい男だ。現実でもハナと一緒にパリのレストランを切り盛りしてほしかったね。ハナがヘンリーへ言付けたオーウェンへのラストメッセージが泣かせます。素敵すぎるカップル、ありがとう。
ヘンリー叔父さん…。心からおめでとうございます。自らを閉じ込め、長い長い暗闇のトンネルを彷徨う贖罪の人生。最後は自ら呪縛を解いて胸騒ぎのするブライへ向かった。大切な人たちを二度と失ってなるものか、その強い気持ちと勇敢な行動がマイルズ・フローラを自分の元に引き寄せる引力となったのでしょう。ブライの呪いが解けた後のマイルズとフローラのガラリと変わった柔和な表情と笑顔が完璧に最高なのだ。ラストシーンでヘンリー(実の父)とフローラ(実の娘)が楽しそうに踊る姿を見れば、その後の人生が幸せに包まれていることがよく伝わってきます。
すべてを忘れて前に進むのが人生、すべてを背負って日々を過ごすのもまた人生なのかもしれません。
最後に(まとめ)
「ザ・ホーティング・オブ・ブライマナー最終話」はいかがでしたでしょうか。
この作品は「ウィングレイブ一家」をめぐる「ブライのお屋敷」にまつわる完璧に最高なヒューマンドラマでした。
「愛する人を葬った。枝垂れ柳の下で」
第1話冒頭。ジェイミーが椅子にもたれながら目覚める。部屋のドアを少し開けたまま、バスタブに水を張った状態で…。そして終幕はジェイミーが椅子にもたれながら眠りにつく。この最初から最後へつながる場面、至福の瞬間でした。ラストカットではじんわり胸が熱くなり、じわじわと熱いものがこみ上げてくるのです。
ぜひとも見逃さず、ジェイミーが婚前最後の夜にフローラへ語った「愛する人とともにある生き方」の極意をかみ締めながら味わっていただきたいと思います。
「ザ・ホーンティング・オブ」シリーズ次回作はあるのでしょうか。あるとすれば、本作ともまた違った新たに新鮮な驚きをもたらしてくれることを期待しています。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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