今回は2009年に公開された『愛を読むひと』をご紹介します。
この映画の原作はベルンハルト・シュリンクの『朗読者』で、世界的ベストセラーになった感動作品を、アメリカとドイツが合作で映画化しました。
その年のアカデミー賞では、主要5部門でノミネートされた作品ですが、主演のケイト・ウィンスレットは、この作品で主演女優賞を受賞しています。
『愛を読むひと』のキャスト
ハンナ・シュミッツ : ケイト・ウィンスレット
マイケル・ベルク : ダフィット・クロス(青年期)、レイフ・ファインズ
ジュリア : ハンナ―・ヘルツシュプルング
『愛を読むひと』のあらすじ
1958年、西ドイツ。
15歳のマイケルは、学校から帰宅する途中に市電の中で具合が悪くなってしまいます。あいにくの雨の中、あるアパートの玄関先でおう吐していると、ちょうど帰宅したそこの住人の女性・ハンナに助けられました。ハンナはマイケルの吐しゃ物をバケツの水で流すと、「坊や大丈夫?立ちなさい」と声をかけてくれたのです。その後ハンナは、マイケルを自宅まで送ってくれました。
帰宅したマイケルは、猩紅熱で安静が必要と診断され、3か月間学校にも行けず、家の中で過ごしました。その後元気になったマイケルは、あの日助けてくれた女性に、お礼すら満足に言えていなかったことが気になり始めます。そこでマイケルは、花を買ってハンナの家を訪ねることにしました。しかし訪ねて来たマイケルに、彼女は素気ない態度を取ります。しかしマイケルが帰ろうとした時、ハンナが彼を呼び止めました。「待って、仕事に行くからそこまで一緒に行きましょう。着替えるから外で待っていて。」しかしこの時マイケルはドアの外ではなく、ドアの前でハンナを待ってしまいます。そして何気なく振り向いたマイケルの目に、着替えている彼女の下着姿が目に入りました。年頃のマイケルは、その姿に釘付けになってしまいます。そしてその視線に気づいたハンナと目が合うと、思わず逃げ帰ってしまうのでした。
家に帰ったマイケルは、「彼女に悪いことをしてしまった」と思い悩みます。そして数日後、マイケルは市電の中で、切符切りの仕事をしているアンナを見かけますが、そこでは声をかけることができません。結局マイケルは再びハンナの家を訪ねて行きました。するとハンナは驚いたものの、マイケルのことを叱らずに、「バケツで石炭を運んで来て」と、労働を頼みます。しかしそんな作業をしたことがなかったマイケルは、要領が悪く顔も髪の毛も真っ黒になってしまいました。するとハンナは笑って言いました。「そんなんじゃ帰れないわね、お風呂に入りなさい。」マイケルは気恥ずかしさで抵抗を感じますが、ハンナの家のバスタブに漬かると、嬉しくて気分が高揚するのでした。そんなマイケルに、頃合いを見計らってハンナがタオルを持って来ます。そしてバスタブから出たマイケルの後ろに立つと、そっと背中にタオルを掛けてくれたのです。大胆にもその時ハンナは、何も着ていませんでした。マイケルの体を拭いた後、後ろからそっとマイケルを抱きしめるハンナ。「このために、また来たんでしょう?」そしてマイケルはこの日、21歳も年上のハンナと初めての経験をしたのです。
それからマイケルは、学校が終わるとハンナの家へ行き、二人は関係を深めていきました。ある日ハンナは、「今何を勉強しているの?」と、マイケルに尋ねます。マイケルが「今ドイツ語の勉強で、戯曲を習っている」と言うと、彼女は「読んで聞かせて」とせがみました。そしてマイケルがハンナのために朗読をすると、彼女は「上手ね」と言って褒めてくれたのです。この時マイケルは、「自分に初めて自信が持てた」と大喜びでした。
こうしてマイケルにとってハンナは、かけがえのない人になっていきました。ある日ハンナを怒らせてしまったマイケルは、「出会ってまだ4週間なのに、君無しではいられない、愛している」と涙ぐんでしまいます。するとハンナは、「これからは順番を変えるわよ、まず本を読んでから抱き合うの」と仲直りの条件を出しました。それからマイケルは、何冊もハンナのために朗読をしました。それを聞いてハンナは時には泣き、時には笑い、二人は楽しい日々を過ごしたのです。ハンナは感情が激しい女性で、教会で讃美歌を聞いて涙することもありました。傍から見れば親子に見られるような二人でしたが、マイケルは、そんな彼女を心から愛しいと思っていたのです。
そんなある日、ハンナは市電内の仕事から事務の仕事に昇進させると、上司から内示を受けます。その日はマイケルの誕生日でしたが、ハンナはとても不機嫌で、何か思い悩んでいるようでした。マイケルはそんなハンナの態度に不満をぶつけます。友達が誕生日パーティーを計画してくれたのに、マイケルはハンナとの約束を優先して、会いに来ていたからです。しかしこの時マイケルは、ハンナの苦悩の正体にまだ気づいていませんでした。この日ハンナは、お風呂でマイケルの体を隅々まで丁寧に洗います。そしていつものように抱き合った後、ハンナはマイケルに言いました。「友達のところに帰りなさい。」言われた通り、一旦は友達のところへ行ったマイケルでしたが、何か気になって再びハンナの家へ戻ります。しかしハンナは、荷物をまとめて部屋から出て行ってしまった後でした。そしてそこへ二度と戻ることはなかったのです。
それから数年後、大学で法律を学ぶマイケルは、教授のゼミで、ある裁判を見学します。しかしその裁判の被告人席にハンナの姿が…
『愛を読むひと』の見どころ
この映画の見どころは、ハンナの秘密です。
何故マイケルに本を朗読させたのか?何故突然マイケルの前から姿を消したのか?何故重刑になったのか?
その理由は、いずれも“ハンナの秘密”が原因になっています。
しかし敢えて辛い思いをしてまでも、ハンナはその秘密を守ろうとしました。
そんなハンナの心情が、見どころの一つになっています。
そして二つ目の見どころは、ハンナの感情です。
マイケルに本を読んで貰うのが大好きで、その感動を素直に表現するハンナ。
喧嘩をして感情を露わにする時もそうですが、ハンナはマイケルの前では本当に素直なのです。
最後に三つ目の見どころは、結末です。
悲しい最後ですが、大人になったマイケルと、受刑者として再会したハンナの、愛情の形にほんの少しズレが生じてしまった結果でしょうか?
『愛を読むひと』の感想
原作が世界的なベストセラーだけあって、とてもストーリーが素晴らしい作品でした。
ハンナが抱える問題は、現代の私たちでは理解するのが難しいと思いましたが、その秘密を明かす勇気がもし彼女にあったら、切ない結末にはならなかったかもしれません。
マイケルに本を朗読して貰っている時に、感動して泣いたり、面白くて笑い転げたり、そんな感受性が豊かな主人公ハンナは、とてもチャーミングに感じました。
その反面、人に対して頑ななまでに寄りかかろうとしなかったのは、彼女のコンプレックスがどれだけ重たかったのかを物語っています。
そしてそれが同時に、ハンナのマイケルへの愛情の証であるようにも思いました。
21歳の年の差はありましたが、二人は確かに愛情で結ばれていましたし、マイケルが年を取った後も、まるで少年のようにハンナを喜ばせたいと思い続けているところに感動しました。
まさに純愛を描いた名作ですね。
『愛を読むひと』のまとめ
今回は『愛を読むひと』をご紹介しました。
21歳も年の差がある二人の、愛情と苦悩を描いたこの作品。
ドイツのベストセラー本・『Der Vorleser』を、アメリカとドイツが合作で『The Reader』として映画化。
どちらのタイトルも、意味を日本語に直訳すると“読者”となりますが、
この映画を日本では、『愛を読むひと』という最高に素敵なタイトルにしています。
とても素晴らしい作品なので、まだ視聴していない方は、是非本編をご覧になってみてはいかがでしょうか。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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