『夜明け』のキャスト・あらすじ・見どころ・感想

映画

今回は2019年に公開された日本映画『夜明け』をご紹介します。

この作品は、『誰も知らない』、『万引き家族』などで知られる是枝裕和監督の愛弟子である、広瀬奈々子さんが脚本・監督を務めています。

この映画が監督デビュー作となった広瀬奈々子さんは、“期待の新人監督”として注目されていますが、それ以前は『そして父になる』、『海街diary』など、監督助手として是枝作品に多数参加しています。

 

『夜明け』のキャスト

 

シンイチ  : 柳楽優弥

涌井哲郎  : 小林薫

成田宏美  : 堀内敬子

 

『夜明け』のあらすじ

 

ある日の明け方、一人の青年(柳楽優弥)がうす暗い橋の上で、絶望感に打ちひしがれていました。青年は自らの人生を、「どうでもいい人生」だと思ってしまっていたのです。数時間後、釣りにやって来た哲郎(小林薫)は、河原で倒れている青年を見つけて慌てて保護します。発熱していた青年を自宅へ連れて帰ると、哲郎は青年を布団に寝かせて介抱するのでした。

その後目覚めた青年に、必要以上に詮索することを遠慮する哲郎。言いたくないことは無理に言わなくて良いと言う哲郎に、青年は混乱しながらも、素直な気持ちを口にします。「どうやって帰ろうかと・・・」そんな青年に哲郎は言いました。「良くなるまで、少し休んで行きな。」哲郎が青年に名前を聞くと、青年は「ヨシダシンイチ」と答えます。

翌日哲郎は自分の職場にシンイチを連れて行きました。哲郎は木工所の職人ですが、勿論シンイチはそんな仕事に興味がありません。しかし何故か哲郎は、シンイチに職人の仕事を教えようとします。その夜哲郎とシンイチは、木工所の従業員たちと居酒屋へ飲みに行きました。すると、その居酒屋の店長が従業員を叱責しているところを、シンイチが見てしまいます。この時シンイチの心に重たい過去が蘇えるのですが、まだ誰もそれに気づいていませんでした。

それから数日経ったある日、哲郎がシンイチに木工所でのアルバイト料を渡します。恐縮するシンイチ。しかし哲郎はそれだけでなく、二階の一室をシンイチに提供してくれました。シンイチがその部屋に入ると、オーディオや楽器などが置かれています。そしてそこには、“二級技能検定合格証書”が置いてありました。合格証書に書かれている名前は涌井真一。それは哲郎の息子のものだったのです。

この時、何故哲郎が自分に良くしてくれるのか、シンイチにはわかったような気がしました。実は哲郎は8年前、妻と息子を交通事故で亡くしていたのです。失意の哲郎でしたが、今は木工所の事務員・宏美(堀内敬子)と交際中で、結婚も決まっていました。哲郎の事情を知ったシンイチは、その日少しだけ自分の家庭のことを哲郎に話します。

ある日一人で出かけた哲郎の後をつけたシンイチは、お墓の前で手を合わせている哲郎を見ました。その直後、公衆電話から自分の家に電話をするシンイチ。電話の向こうの人物は、シンイチを「光」と呼びます。本当はシンイチという名前は嘘で、それがたまたま哲郎の息子の名前と同じだったのです。シンイチが家に帰って改めて仏壇の中を見ると、そこには哲郎の息子の写真がありました。それからシンイチは、自分の髪の毛を哲郎の息子と同じ色に染めたのです。

ある日哲郎はシンイチを釣りに誘って、あの河原へ行きました。「お前、ここで死のうとしたんじゃないのか?」いきなり哲郎に核芯を突かれたシンイチは、「こんな人生なんてどうでもいい」と本音を漏らします。実はシンイチには、どうしても人に言いたくない秘密があったのです。

 

『夜明け』の見どころ

 

この作品の見どころは、広瀬奈々子監督が「この作品で何を表現したかったのか?」というところだと思います。

『夜明け』の公式サイトに、広瀬監督のコメントが掲載されているのですが、それを参考に、独断で見どころを3点に絞ってみました。

まずは自立できない若者・シンイチ(本名:光)を柳楽優弥さんが熱演していますので、その演技力は見どころだと思います。

次に、シンイチに救いの手を差し伸べた哲郎の、純粋な優しさとエゴが見どころです。

哲郎は、死にかけていたシンイチを保護して、食事を与えます。

当然、「落ちついたら出て行く」という気持ちのシンイチでしたが、哲郎は本人の意に反して仕事を与え、亡くなった息子の部屋を与えます。

そして最後は本人の意向に関係なく、完全なエゴに走ってしまいます。

親切な叔父さんだったのに、狂気や執着を感じさせるまでになってしまった、哲郎の変化に注目です。

最後に、哲郎の救いに甘えて、さりげなく媚びるシンイチの本心は?というところが見どころです。

哲郎の亡くなった息子の写真を見たシンイチは、自分の髪の毛を彼と同じ色に染めるという行動に出ます。

その目的や本心は、「恩人を喜ばせたい」というようにも見えますし、「あざとい」ようにも映ります。

観る側によってどう捉えるのかは、様々ではないでしょうか。

 

『夜明け』の感想

 

視聴した後「面白かった」と満足できる作品は、ハッピーエンドだったり、はっきりとしたオチがあったりしますよね。

そういう意味では、「何かモヤモヤする」ラストになっている作品でした。

ただ、それこそが“現代の若者”であると捕えれば、それも納得できる作品なのだと思います。

哲郎の決して偽善ではなかった“救い”から、「俺にはお前が必要なんだ」という“依存”、そしてシンイチの意向に関係なく、このまま側に置いておこうとする“エゴ”。

そんな哲郎の様子に、シンイチは「逃げたい」と思うのですが、視聴していても、「ああ、嫌だ」と感じてしまい、“エゴ”に捕らわれた哲郎の束縛は、ある意味恐ろしいものがありました。

 

『夜明け』のまとめ

 

今回は日本映画『夜明け』をご紹介しました。

自立できない若者の苦悩と、手を差し伸べた人間の親切とエゴを描いた本作。

柳楽優弥さんと小林薫さんが、難しい役を見事に演じていますので、興味のある方は是非本編をご覧になってみてはいかがでしょうか?

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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